店借たながり)” の例文
いえ/\二君につかえんなどと申すは立派な武士の申すことで、どうか斯うやって店借たながりを致して、売卜者ばいぼくしゃで生涯朽果くちはてるも心外なことで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
景清かげきよは、あれは上野の清水堂にある。いっそ趣をかえて江戸風俗の美人画でも写してみようか、では浮世絵の店借たながりをするようだ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
店借たながり住居すまひは、船越街道ふなこしかいだうよりみぎにだら/\のぼりのところにあれば、さくらヶ岡をかといふべくや。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『申し上ぐるも背汗の至りに存じますが、本所林町に店借たながりして、わびしく浪人暮しをいたしておりまするが、さて、仕官の口も見あたらず、ただ無為な日を過して居りまするばかりで』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫までは糞桶こえたごを担いでいた百姓が俄に紋付の羽織を着る地主様となって、お邸の旦那様が一朝にして下掃除人しもそうじにん地借じがり或は店借たながりとなって了う。経済上の変革が齎らす位置転換も爰に到って頗る甚だしい。
駆逐されんとする文人 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
暢気のんきなもので別れて行った。意を了して、その頃同朋町どうぼうちょう店借たながりをしていた長屋に引返ひっかえして、残りの荷物をまとめたが、自分の本箱やら、机やら、二人のりには積み切れないで、引越車をまた一輛。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)