年長うえ)” の例文
奥さんの小言の飛沫とばしり年長うえのお嬢さんにまで飛んで行った。お嬢さんは初々ういういしい頬をあからめて、客や父親のところへ茶を運んで来た。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お雪は乳呑児ちのみごを抱いて二週間目で自分の家へ帰って来た。下婢おんなも荷物と一緒に車を降りた。つづいて、三吉が一番年長うえの兄の娘、お俊も、降りた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸本は旅のかばんから取出した帳面や色鉛筆やお伽話とぎばなしの本なぞを兄の年長うえの子供と自分の子供等との前へ持って行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この嫂は岸本が一番年長うえの兄の連合つれあいにあたって、節子から言えば学校時代に世話に成った伯母さんであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふるい小泉を相続したこの一番年長うえの兄が、暗い悲酸な月日を送ったのも、久しいものだ。彼が境涯の変り果てたことは、同じ地方の親しい「旦那衆だんなしゅう」を見ても知れる。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
叔母おばさんのくなった時は、なにしろ一番年長うえの泉ちゃんが六歳むっつにしか成らないんだからね。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こういう妹のところへ、相応な肩書のある医者の養子が来た。腹違いの一番年長うえの弟、これも今では有望な医学士だ。山本さんだけは別物で、どうしても父の業を継ぐ気が無かった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
養子して名倉の家をいだ一番年長うえの姉、※という店を持って分れて出た次の姉、こういう人達の写真も出て来るたびに、お雪は妹と生家さとうわさをした。お福の下にまだ妹が二人あった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふうちゃん、橋本の伯母さんだが、覚えているかい」と三吉は年長うえの娘に尋た。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
深い露の中で、学士は朝顔ばちの置並べてある棚の間をあちこちと歩いていた。丁度学士の奥さんは年長うえのお嬢さんを相手にして開けひろげた勝手口で働いていたが、その時庭を廻って来た。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一番年長うえのは最早もう十四五になる。狭い帯を〆《しめ》て藁草履わらぞうりなぞを穿いた、しかし髪の毛の黒いだ。年少とししたの子供は私達の方を見て、何となくキマリの悪そうなはじを帯びた顔付をしていた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)