平目ひらめ)” の例文
そういえばなるほど、ひらめというおさかなは、目が背中せなかについています。ですからいまでも、おやをにらめると、平目ひらめになるといっているのです。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
次ぎに掲げるのは日高国ひだかこく沙流郡さるぐん平取村びらとりむら荷菜にな平目ひらめカレピア婆さんが久保寺逸彦氏に伝えたもので、訳文も同氏の手になる。
おれは今六十五になるが、たい平目ひらめの料理で御馳走になった事もあるけれど、松尾の百合餅程にうまいと思った事はない。
姪子 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
矢庭やにわに食卓をひっくりかえす)久しぶりの平目ひらめじゃないか。お母さんにも、お前にも、みんなに食べてもらいたくて買って来たんだ。それを、なんだ。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
丈は一尺ほどで、形はやや平目ひらめ茶釉ちゃぐすりに薄い鶉斑うずらふがあり、アッサリとして軽い出来で、底がすこし凹んでいる。土師物はじもの陶物すえものの間を行ったような見馴れる壺であった。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
伊東温泉には海も川もあり、鱸も平目ひらめも、鮎も山女魚もいる。修善寺温泉を中心とした狩野川と大見川の漁師は、友釣り技術においては全国に冠たりと言われているほどだ。そして山女魚もいる。
水の遍路 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
そして大きなたい平目ひらめを、持って来てくれました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
平目ひらめのように潰されなければならない。
国民学校教師、野中弥一、酔歩蹣跚すいほまんさんの姿で、下手しもてより、庭へ登場。右手に一升瓶、すでに半分飲んで、残りの半分を持参という形。左手には、大きい平目ひらめ二まい縄でくくってぶらさげている。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
(野中)(その襖の外の節子に平目ひらめを手渡しながら)たったいま、浜からあがった平目だ。刺身さしみにしてくれ。奥田先生と今夜は、ここで宴会だ。いいかい、刺身をすぐに、どっさり持って来てくれ。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)