市女いちめ)” の例文
その市女いちめは、芸妓げいこに限るんです。それも芸なり、容色きりょうなり、選抜えりぬきでないと、世話人の方で出しませんから……まず選ばれたおんなは、一年中の外聞といったわけです。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大津絵の藤娘がて居る市女いちめ笠の様な物でも大分だいぶに女の姿を引立たして居ると自分は思ふのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
京は広い所であるから、市女いちめというような者に頼んでおくと、上手じょうずに捜してつれて来るのである。だれの姫君であるかというようなことはだれにも知らせてないのである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
やや似た境遇にある者でイタカという部曲かきべがあったこと、それから推して行くと上代において板挙と書き、後々市女いちめまたは一の御子みこなどと呼ばれた、神に仕える一種の女性があったのも
市女いちめ笠の女、指抜さしぬきの若者、武士、町人、公卿の子息、二十人近くも囲繞いていたが、いずれも茫然ぼんやりと口をあけ、息を詰めて聞き澄ましている。反対をする者もない、同意を表する者もない。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さち市女いちめにひさがれて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
と、前後まえうしろの屋台の間に、市女いちめの姫の第五人目で、お珊が朗かな声を掛けた。背後うしろに二人、朱の台傘をひさしより高々と地摺じずれの黒髪にさしかけたのは、白丁扮装はくちょうでたち駕寵かご人足。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宝の市の屋台に付いて、市女いちめまた姫ともとなうる十二人の美女が練る。……
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)