巨漢おおおとこ)” の例文
山陽ホテルの駅前街路を見晴らす豪華な一室に、立派な緞子どんすの支那服を着た、鬚髯ひげと眉毛の長い巨漢おおおとこが坐っていた。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
思わぬ裏切者が出て、賊は狼狽したが、日頃から図抜けた巨漢おおおとこの鈍物と、小馬鹿にしていた卒なので、その怪力を眼に見ても、まだ張飛の真価を信じられなかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも嬢の直ぐ次に馬を立てるあの色の黒い、鬚武者の巨漢おおおとこが、眼色や身振りで、自在に操っているのである。これは卓子テーブル飛び越しの最中に見付けた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
役館の番卒は、「何者だっ」と、中から覗き合っていたが、重棗ちょうそうの如きおもてに、虎髯こぜんを逆だて、怒れる形相に抹硃まっしゅをそそいだ巨漢おおおとこが、そこを揺りうごかしているので
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本署からは剛腹で有名な巨漢おおおとこの司法主任馬酔あせび警部補と、貧相な戸山警察医のほかに、刑事が二名ばかり来ていた。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だがまたたく間に近づいてきたのを見ると、木の葉どころか身のたけ七尺もある巨漢おおおとこだった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中禿なかはげの額の汗を拭き拭き椅子に腰をかけたついでに支那人風の巨漢おおおとこに顔をさし寄せて声を潜めた。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、異様な声を発して、明智方から挺身ていしんして来る巨漢おおおとこがある。見るまに、彼の重そうな強槍は、中川隊の士を四、五名突ッかけて、左右にねとばし、なお此方へ奮迅ふんじんして来た。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この男は鬚武者の巨漢おおおとこの癖に恐ろしく智恵の廻る奴で、この一年ばかりの間、団長と一緒に欧羅巴ヨーロッパをメチャメチャに掻きまわして廻ったのは、ハドルスキーの智恵に外ならぬ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると、次の日、一隊の豹卒ひょうそつを率いて、陣頭へやって来た巨漢おおおとこがある。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
色の黒い、逞しい鬚武者ひげむしゃ巨漢おおおとこの髪毛は、海藻のように額に粘り付いている。今一人の若い男は、あまり固いカラを着けているために、首の周囲が擦れて輪の形に赤くなっている。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同銀行の支配人で井田という大阪弁丸出しの巨漢おおおとこがこの事務所を訪れて、事務員や私にまでピョコピョコ頭を下げまわったのに対して、赤ん坊位にしか見えない叔父がり身になりながら
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その支那人風の巨漢おおおとこは鮮やかなドッシリした日本語で喋舌しゃべり出した。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)