山雨さんう)” の例文
私がこの前普賢ふけんのぼった時、雷雨に逢った事は既記ききしたが、山雨さんうまさに至らんとする前の普賢の印象も、長く忘るる事が出来ない。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
半里か一里ごとには肩代りしてゆくのだが、道はぬかるむばかりだし、山雨さんうは輿の御簾ぎょれんを打ッて、帝のお膝のあたりも冷たく濡れてきたにちがいない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山雨さんうまさに到らんとして、かぜろうに満つ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ことに厳粛げんしゅくきわまる武神ぶしん武人ぶじん大行事だいぎょうじ、おのずから人のえりをたださしめて、一しゅんののちは、まるで山雨さんうして万樹ばんじゅのいろのあらたまったように、シーンと鳴りしずまったまま
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とは「古典太平記」がいっているところだが、冷たい晩秋の山雨さんうに吹き打たれたあげく、二日三晩もの彷徨さすらいを、天皇までが、まったくお口に一物をらなかったとはおもわれない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——山雨さんうまさにいたらんとして、さ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)