山方やまかた)” の例文
きさらぎや多摩の山方やまかた、まだ寒き障子あかりどの内、人影の、手に織る機の、ていほろよをさうつらしき。立ちどまり、うつらに聴けばからりこよ、の鳴るらしき。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
黒媛くろひめは天皇を山方やまかたというところへおつれ申しました。そして、し上がり物にあつものをこしらえてさしあげようと思いまして、あおなをつみに出ました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「お金で済めば結構でござんすけれど、山方やまかたの人はそんなことに気がつかないで、お金などを出してはかえってお役人に失礼なんぞと遠慮をなさるかも知れませぬ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はなはだうまい物だがこの餅をこしらえると、天狗が集まってくると称して村内の家では一切焼かぬようにしていた。故に一名を山小屋餅、江戸近くの山方やまかたでは、古風のままに粢餅しとぎもちと呼んでいた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きさらぎや多摩の山方やまかた、まだ寒き障子あかりどの内、人影の、手に織る機の、ていほろよをさうつらしき。立ちとまり、うつらに聴けば、からりこよ、の鳴るらしき。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
よく山方やまかたに見ゆる強力ごうりきたぐいが同勢合せて五人、その五人ともに、いずれも屈強な壮漢で、向う鉢巻に太い杖をついて、背中にはかなり重味のある荷物を背負しょっています。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お気の毒でございます、こんな山方やまかたで、急病の時はさだめてお困りのことでござんしょう」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
竹若葉みどりこまかき山方やまかたのひといろのなびき朝目にも見よ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
農工商、或いは山方やまかたへ出入りの木樵きこり炭焼すみやきで、詩を吟じて歩くようなものはないはず。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
竹若葉みどりこまかき山方やまかたのひといろのなびき朝目にも見よ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
五彩絢爛ごさいけんらんとして眼を奪う風景を、正直にいちいち応接して、酔わされたような咏嘆えいたんをつづけているのはお雪ちゃんばかりで、久助は馬方と山方やまかたの話に余念がなく、竜之助は木の小枝を取って
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
茅蜩ひぐらしのこの日啼きそめ山方やまかたやまだゆふあは合歓ねむのふさ花
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今まで、あたいを頼みに来るのは、山方やまかたばっかりよ。あたいに鳥を追わせたり、蛇をつかまえさせたり、また虫を取って来て天気をうらなわせたりするんだけれど、江戸へ連れて行ってどうするんだろう。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
茅蜩ひぐらし合歓ねむの夕花咲きそむる山方やまかたにして気色けしき添ひつつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山方やまかた国上くがみへかかる道のにぬきて竝べぬ涼し早稲苗わさなへ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夜のほどろ疲れ帰りて力無し山方やまかた早く蝉の啼くもよ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)