居残ゐのこ)” の例文
旧字:居殘
先刻さつきから三人四人と絶えずあがつて来る見物人で大向おほむかうはかなり雑沓ざつたふして来た。まへまくから居残ゐのこつてゐる連中れんぢゆうには待ちくたびれて手をならすものもある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此時同勢のうち長持ながもち宰領さいりやうをして来た大工作兵衛がゐたが、首領の詞を伝達せられた時、自分だけはどこまでも大塩父子ふしの供がしたいと云つて居残ゐのこつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
役者の仕着しきせを着たいやしい顔の男が、渋紙しぶかみを張つた小笊こざるをもつて、次のまくの料金を集めに来たので、長吉ちやうきちは時間を心配しながらものまゝ居残ゐのこつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)