小格子こごうし)” の例文
見ると、いかさまがさつ屋らしく、そこらあたりの小格子こごうし遊女ででもあるのか、すこぶる安手の女で、あまつさえもう大年増おおとしまです。
つうな遊びは小格子こごうしってえますからね、大店おおみせは田舎者の遊ぶところだから、ばかな金をふんだくられるだけでさ、そこへいくと小格子はちょくで情があって——
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ぶらさげて新町の小格子こごうしをあるいていると、遊廓くるわの人気は、こぞって自分へ集まって来るように、黄いろい声が、二つの耳では聞きとれないくらい、方々からかかる。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘は突当りの小格子こごうしを開けて中に這入った。小格子の前には「質屋」と看板が掛かっていた。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「馬鹿野郎、またどこかの小格子こごうしの化け損ねた狐のようなのにはまり込みやがったんだろう」
穀類や、雑貨やをゴタゴタとならべてあって、帳場には昔のままの小格子こごうしが黒く光っていた。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
まだ宵の口で、大根畠だいこんばたけ小格子こごうしといっている湯島の遊女屋へ行くぞめきの客が歩いている。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
翌年ひとり芳原よしわら小格子こごうしに遊び、三年を出でざるに、東廓南品、甲駅、板橋、凡そ府内の岡場所おかばしょにして知らざる処なきに至る。二十四歳海外に渡航するや五大洲各国の娘子軍じょうしぐんげきまじへ皆抜羣ばつくんの功あり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それはその前夜吉原よしわら小格子こごうしで知った女の名であった。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
総桐そうぎり小格子こごうし造りで、ここにこうやりながらやにさがってすわってみると、お旗本も五千石ぐらいな気持ちだね——ついでだからちょっと念を押しておきますが
その頃裏田圃が見えて、そして刎橋はねばしのあった娼家で、中米楼についでやや格式のあったものは、わたくしの記憶する所では京二の松大黒まつだいこくと、京一の稲弁いなべんとの二軒だけで、その他は皆小格子こごうしであった。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小格子こごうし造りの表に立って、ひょいとのぞくと、玄関口になまめかしい女物のげたが一足見えるのです。