射竦いすく)” の例文
その大きな瞳といわず、胸、肩といわず、それは電気性のものとなって、びりびり彼女を取り込め、射竦いすくますような雰囲気を放った。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
耳を澄せば近いようでもあり、遠いようでもあり、鳥か獣かそれすらも分らぬ。私は其声に射竦いすくめられて、三十分余りも樹の枝にしがみ付いていた。
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
双眸そうぼうの中を、にじが走っているように、殺気の光彩が燃えている、相手を射竦いすくめんとしている。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして百に近い負傷兵の何となくおびえた、怨めしそうな、力ない視線に私の全神経が射竦いすくめられて、次第次第に気が遠くなりかけて来た時にヤット全部の診察、研究が終ると
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
僕はきっとその光のために射竦いすくめられるにきまっている。それと同程度あるいはより以上の輝くものを、返礼として彼女に与えるには、感情家として僕が余りに貧弱だからである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若い女二人の白い眼に射竦いすくめられて、いつまでももじもじしていることでしょう。
と切なる声にいかりを帯びたる、りりしき眼の色恐しく、射竦いすくめらるるおもいあり。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次の瞬間には山という山が四方から放つ鋭い銀箭ぎんせんの光に射竦いすくめられてしまった。其時私は一年の間心の隈々に暗い影を投げていた大なる欠陥が今既に半ば満たされたような気がした。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
若い女二人の白い眼に射竦いすくめられて、何時までもぢ/\して居ることでせう。
強い日が正面から射竦いすくめる様な勢で、代助の顔を打った。代助は歩きながら絶えず眼とまゆを動かした。牛込見附うしごめみつけを這入って、飯田町を抜けて、九段坂下へ出て、昨日寄った古本屋まで来て
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの景陽岡けいようこうの虎をさえ射竦いすくませたといわれている眼光である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彌次馬と源吉の眼に射竦いすくめられて居たお吉は、此時漸く聲を掛けました。