寡慾かよく)” の例文
三篇でも出来ればあとはどうでもよいという寡慾かよくな男に候処、それをやるには牛肉も食わなければならず玉子も飲まなければならずという始末からして
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
何たる寡慾かよく。あわれいじらしい。われら武門は、百難苦戦を真ッ向にかぶって進み行くとも、民の婦女老幼は、生々と生き楽しませつつ連れ歩みたいものよ
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下の人皆ざいむさぼるその中に居て独り寡慾かよくなるが如き、詐偽さぎの行わるる社会に独り正直なるが如き、軽薄無情の浮世に独り深切しんせつなるが如き、いずれも皆抜群のたしなみにして
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
収入満とうなるといえども、常住の寡慾かよくもやらで、慈善のよくは極り無く、貪るばかりに取込みても人に施すにはいまだ足らずと、身をにし、骨を折る、賢媛けんえん閨秀けいしゅう難有ありがたさよ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悪きことはさいを見ておのの臆病心おくびょうしんにあるのだから、その温順寡慾かよくなる羊質をもちながら、なおとら驍悍勁厲ぎょうかんけいれいなる質を修めたら、すなわち廉毅忠果れんきちゅうかの性格となりてこれにゆる人格はなかろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
寡慾かよくを示して、勝家にも、寡慾をすすめて来たものだ。そして信雄、信孝に多くを割当て、あとは山崎のとむらい合戦の功によるかの如き分割案の振り当てだった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)