寝息ねいき)” の例文
旧字:寢息
彼の隣には父の賢造けんぞうが、静かな寝息ねいきを洩らしていた。父と一つ部屋に眠るのは、少くともこの三四年以来、今夜が彼には始めてだった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
其時そのときや、よるがものにたとへるとたにそこぢや、白痴ばかがだらしのない寝息ねいききこえなくなると、たちまそとにものゝ気勢けはひがしてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
実に神はかく人を母の胎内に造りしのみならず、これに生命と恩恵とを授け、これを顧みて、あたかも母がその子の寝息ねいきを守るが如くに人のいきを守るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
寝息ねいきを乱すまいとして、ことさらに規則正しい息づかいをしていることがよくわかった。手が燃えるように熱くなったと思うと、急に氷のように冷たくなったりした。
須佐之男命すさのおのみことは、そっとその寝息ねいきをうかがっていらっしゃいましたが、やがて、さあ今だとお思いになって、十拳とつかつるぎを引きくが早いか、おのれ、おのれと、つづけさまにお切りつけになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そこここにいぎたなき駱駝らくだ寝息ねいき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)