やど)” の例文
だが、此歌は、無知の歌占・尼巫子などの平俗な語彙にやどつた、放心時の内的律動の姿である。
ひそかにある家にやどり給うたところ、それを一人の女が聞き知って、けがれし霊につかれた自分の小娘をいやしていただきたいと、家に入り来たり御足のもと平伏ひれふしてお願いしました。
『郷土研究』一巻三九六頁に見た中国の蛇神トウビョウも蛇に似て短いとは、かかる畸形の一層烈しいのでなかろうか。インドのカーシャヒルス地方の迷信に、蟒蛇うわばみが人家にやどれば大富を致す。
丁寧ていねいに髪を掻いたお初、大好きな西陣ちりめんの乱立てじまの小袖に、いくらか堅気すぎる厚板の帯、珊瑚さんごも、べっこうも、取って置きのをかざって、いい時刻を見はからって、黒門町のやどを出る。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
在来の童謡に神道がやどつて出ると言ふ信仰と一つになつて、国風を蒐め竹枝を拾ふ試みが既に行はれて、アヅマ歌其外地方の民謡などの可なりの分量が、大歌所に集められて居たものと信じてよい。
万葉集のなり立ち (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
シタに来てからは、死を自在に扱ふ彼であつた。智慧と幸運とは其死によつて得た力に光りを添へる事になつて来る。焼津野の談は、やまとたけるの上にも、復活の信仰のやどつて居ることを見せる。
万葉びとの生活 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)