寒鴉かんがらす)” の例文
ゆうべの、寒鴉かんがらすにちげえねえ。勘太をやッつけたのも、小屋をこんなにしやがったのも、あの鼻の先のひん曲った色の黒い素浪人だ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ん! 寒鴉かんがらすめ。あんなやつもめったにゃねえよ、往来の少ないところなら、昼だってひよぐるぐらいは大目に見てくれらあ、業腹な。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おれが御歳暮に寒鴉かんがらすの五、六羽も絞めて来てやるから、黒焼きにして持薬にのめとそう云ってやれ。もし、大和屋の旦那。おめえさんの眼玉もちっとくもっているようだ。
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かわ/\と大きくゆるく寒鴉かんがらす
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
と、その北風の吹きするこずえに、寒鴉かんがらすのようにとまった男、なおもジッと見ていたが
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羽ひらきたるまゝ流れ寒鴉かんがらす
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
人心地もなく、迷いあるいて、ただ麓へ麓へと、うつろに道を捜していたが、気がつくと、いつか陽も暮れて、寒鴉かんがらすの群れ啼く疎林そりんのあたりに、宵月のはいがほのかにさしかけている。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つき枝を踏み替へ寒鴉かんがらす
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
『あったかいのだ。木工爺もくじじよ。おまえの、体だけが、おれには、あったかい。——おれは、ひとりぼっちの寒鴉かんがらすだ。……母は、あんなだし、父上も、ちがっていた。おれは、平ノ忠盛の、ほんとの子ではなかったそうだ』
石はうる人をさげすみ寒鴉かんがらす
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「寒い、寒い。今夜はばかみた寒鴉かんがらす
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我行けば枝一つ下り寒鴉かんがらす
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
清浄しょうじょうの空や一羽の寒鴉かんがらす
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)