-
トップ
>
-
家藏
>
-
いへくら
失ひたる如く只
茫然として居たりけり然ば段々と打ち續きたる
冗費に今は
家藏も云に及ばず假令家財雜具迄も
賣拂へばとて
勿々借金の方に引足ず母子倶々種々に心を
制し
凱歌の
聲いさましく
引揚げしにそれとかはりて
松澤が
周章狼狽まこと
寐耳に
出水の
騷動おどろくといふ
暇もなく
巧みに
巧みし
計略に
爭ふかひなく
敗訴となり
家藏のみか
數代續きし
暖簾までも
皆かれが
手に
歸したれば
木より
落たる
山猿同樣たのむ
木蔭の
雨森新七といふ
番頭の
白鼠去年生國へ
歸りし
後は