宮司ぐうじ)” の例文
今日にては安仁やすひと神社の宮司ぐうじに進みて、現職の人であります故、最もたしかな話ですから、特にこの河野のことをお話しいたしたのであります
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
飛騨ひだ水無みなし神社宮司ぐうじを拝命すると間もなく、十一月十七日の行幸の朝に神田橋外まで御通輦ごつうれんを拝しに行くと言って、浅草左衛門町さえもんちょうを出たぎりだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
若宮八幡の宮司ぐうじの娘さん、とてもすっきりしているそうですが、おきゃんで、人見知りをしないそうです。大林寺の裏方は、もうちょっと背が高くなければいけません……
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼のまことの母の春日野かすがのは、弟が引き取られると同時に行方が分らず、津の国で見た者がいるともいい、大和やまと宮司ぐうじの家で見た者もいるといい、まちまちな噂であった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
長州藩の家老山県やまがた九郎右衛門、後に男山おとこやま八幡の宮司ぐうじをしてゐた人の落魄してゐたのを引取つて、世話をしてゐたし、んなに、ぴい/\してゐても、痩我慢一つで、押通してゐた。
宮司ぐうじ真人しんじんたちは、あくる日、彼の先導に立った。そして、上清観じょうせいかんの唐代、五代、宋代にわたる名刹めいさつの建造物を見せてまわり、さいごに九天殿、紫微殿しびでん北極殿ほっきょくでんの奥ふかい社廊をすすみ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松の葉に宮司ぐうじの門は傾きて
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
Tの家は宮司ぐうじで、街道からすこし離れた幽邃ゆうすいな松原湖のほとりにある。Tは私達を待受けていたのだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼にして見ればかつて飛騨ひだ宮司ぐうじをもつとめたことのある身で、このくらいの敬意を不幸な家族に表するのは当然で、それに顔を紅らめる和助の子供らしさがむしろ不思議なくらいだった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)