定木じょうぎ)” の例文
幸い貯えて有りました烏犀角うさいかくを春見がしきり定木じょうぎの上で削って居ります所へ、夕景に這入はいって来ました男は、矢張やはり前橋侯の藩でごく下役でございます
それから鉛筆をとって、十幾つの見世物館の軒先から一間ばかりうしろの方に定木じょうぎを当てると、ズーと太い線を引いた。
わたしの家でも抱え車は父の裁判所行きの定用じょうようのほかは乗らなかったので、何でも偉い事は父親が定木じょうぎであった心には、なるほど偉い芸妓だと思った。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
菊五郎と鴈治郎とはもとより雲泥うんでいの相違あるものなれば並べていひいづるは誤りなれども近頃鴈治郎を見馴れし目より当年の菊五郎を思へば幕明きし時定木じょうぎ
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
数学のうちに幾何というものがある。幾何を学ぶにわ、是非とも定木じょうぎが入る。その定木の中に、三角定木というのがある。——これわ大方諸君みなさんも御存じでしょう。
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
……わたしなら定木じょうぎをあててやるのだけれど。
神童 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
有合ありあわせたけやき定木じょうぎを取って突然いきなり振向くとたんに、助右衞門の禿げた頭をポオンと打ったから、頭が打割ぶちわれて、血は八方へ散乱いたしてたっ一打ひとうちでぶる/\と身を振わせて倒れますと
定木じょうぎとか、模様ものの下絵を描いた、西の内紙で張って、絹さなだ紐をつけた、お召物たとう紙などが残っていたり、将軍さま御用の残り裂れで、人形の帯や巾着きんちゃくが出来ていたが——もっとも
むら/\と起りました悪心から致して、有合ありあ定木じょうぎをもって清水助右衞門を打殺うちころす。
腕はその当時いい男だといわれていたのに、弁当も自分持ちで、定木じょうぎも筆も持参で来て、ひどい机だけかりて仕事をして、それで一日がたった天保銭一枚(当時の百文・明治廿年代まで八厘)。