宗門しゅうもん)” の例文
宗門しゅうもんの身のあるところ、すきさえあれば、火の手をあげて、反信長の兵乱を起している現状では、なおさらのことではありませんか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この理由は私の決心をするのに一つの補助をなしたもので、その実私は二十五歳で出家しゅっけしてから、寺や宗門しゅうもんの事務の為に充分仏道を専修することが出来なかった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
呂宋から柬埔塞カンボチヤの町々を七年がかりで探し歩いたが、その結末は面白いというようなものではなく、そのうえ、帰国後、宗門しゅうもんの取調べで、あやうく火あぶりになるところだった。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
つまり、昔のは、父母兄弟でありましょうとも、案内人が有りましょうとも無かりましょうとも、いったん寺へ入ったものには面会を許さないという、宗門しゅうもんおきてなのでございましたそうです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……まん一、このくすり毒藥どくやくであったら? ロミオどのと縁組えんぐみさせておきながら、婚禮こんれいをさすときは、宗門しゅうもんはぢとなるによって、それでわしころさうといふふか陰謀たくみ毒藥どくやくではあるまいものでもない。
「おさないひめたちが、このあいだから風邪かぜなやんでいる。奥もきょうはそれで祈祷いのりにまいった。アレは昔からその宗門しゅうもんでもあった」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊勢、江州、北陸、諸国に蜂起ほうきしては彼を苦しめた宗門しゅうもん一揆いっきはたしかにそれだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「邪教かぜ禁物きんもつな当今、かりにも切支丹屋敷の付近を、尾州家の者がウロついていたなどと風聞されては困る、第一、宗門しゅうもん役人が寄せつけまい。それよりは、この万太郎に一策があるがどうじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)