嬌艶きょうえん)” の例文
と、云いふくませて、嬌艶きょうえんこびをきそわせたりした。関羽も美人は嫌いでないとみえ、めずらしく大酔して十名の美姫にとり巻かれながら
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
フランスの美文体、フランスの優美、フランスの嬌艶きょうえん、フランスの精神——摂政時代の風俗、赤踵あかかかとくつ、ローザン式の人物——などの花形だった。
朦朧とした写真の乾板かんぱん色の意識の板面に、真佐子の白い顔が大きく煙る眼だけをつけてぽっかり現れたり、金魚のひれだけが嬌艶きょうえんな黒斑を振り乱して宙に舞ったり
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
貧苦と嬌艶きょうえんとはいけない相談役である。一は不平を言い、他はびる。そして下層の美しい娘らはそれを二つながら持っていて、両方から耳に低くささやかれる。
便所によって下町風な女姿が一層の嬌艶きょうえんを添え得る事は、何も豊国とよくに国貞くにさだ錦絵にしきえばかりには限らない。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おのおの貧富にしたがって、紅粉こうふんを装い、衣裳を着け、そのよそおいきよくして華ならず、粗にして汚れず、言語嬌艶きょうえん、容貌温和、ものいわざる者もおくする気なく、笑わざるも悦ぶ色あり。
京都学校の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
茶屋の女たちは下へも置かぬもてなしで、酒肴が並ぶとすぐ歌妓が来る、美しい手で左右から酌をされ、嬌艶きょうえんもたれかかったり肩なんぞ叩かれるという、夢のような世界と相成ったのだ。
恋の伝七郎 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
互いに相俟あいまってその美しさを輝かしまっとうする人がらだったので、友情からというよりもむしろ嬌艶きょうえんの本能から決して離れないで、互いに寄り合ってイギリスふうの態度を取っていた。