嫌気いやけ)” の例文
旧字:嫌氣
そうしなければ、その女に自分らの客をとられてしまってやって行けなかったのかも知れぬが、とにかく、蝶子はぞっと嫌気いやけがさした。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
年少の「野蛮人」たるクリストフは、それを半ばしか味わうことができなかった。ことに劇の全体には、詩には、嫌気いやけを催させられた。
姉の方は女子供ばかりで心細がっているし、私の方は南京虫で嫌気いやけがさしているので、急にこういう相談が出来たのである。
芝、麻布 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
と、嫌気いやけがさして来ると共に、急にその小六の仲間からも、この城下からも、逃げ出したくなった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こせこせした日本人に嫌気いやけがさし、日本人を廃業して中国人になり切り、南シナ海からマレー、インドの方までもこの船一つを資本として、きのうは東に、きょうは西にと
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もろいやつてんの骨頂だという嫌気いやけがしたが、しかし自分の自由になるものは、——犬猫を飼ってもそうだろうが——それが人間であれば、いかなお多福でも、一層可愛くなるのが人情だ。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
情夫が彼女にきるよりももっと早く、彼女のほうで情夫に倦きはてた。彼女は心くじけ嫌気いやけがさし老い衰えてもどってきた。
大江山警部は、さっぱり当りのない愚問ぐもんに、みずか嫌気いやけがさして、鳥渡ちょっと押し黙った。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
テオフィル・グージャールの方は、幾日かあとに、クリストフをそのきたない住居へ、自分から訪ねてきた。彼はクリストフのみじめな生活を見ても、さらに嫌気いやけを示さなかった。
かりに一歩譲っても、不幸は人に嫌気いやけを起こさせる。人は不幸から逃げ出してしまう。苦しむのを許してやる者はきわめて少ない。ヨブの友人らの古い話といつも同じである。
そんなことで満足するにはあまりに真面目まじめな魂をもっている女たちは、慈善ということからどんなに多くのにがい味をなめさせられることでしょう! もしそれに嫌気いやけを起こして無謀にも
孤独のうちにごく皮肉になってる彼の知力は、人の凡俗さや欠点を見てとって、しばしばそれに嫌気いやけを起こしはしたけれど、人と顔を合わして立つときには、彼はもはや相手の眼をしか見なかった。
三日目になって、クリストフは好んで蟄居ちっきょしていたのが腹だたしく思えて、外出しようと決心した。しかしパリーには、最初の晩以来、一種の本能的な嫌気いやけを覚えていた。彼は何にも見たくなかった。
女には嫌気いやけがさしてきた。