婢女じょちゅう)” の例文
奉化ほうかの者で、お父さんは州判しゅうはんをしてたと云ったよ、湖西こせい婢女じょちゅうと二人で暮してると云うのだ、そうかなあ」
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ところがある日若夫婦二人そろいで、さる料理店へ飯を食いに行くと、またそこの婢女じょちゅうが座蒲団を三人分持って来たので、おかしいとは思ったが、何しろ女房の手前もあることだから
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
前に云うのを忘れたがこの母に比して父という人は評判の好人物であったのだ、婢女じょちゅうはなしかく気になるからみんな立合たちあった蒲団ふとんの下を見ると、はたせるかな、二通の遺言状が出た
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
私がかつて、逗子ずしに居た時分その魔がさしたと云う事について、こう云う事がある、丁度ちょうど秋の中旬はじめだった、当時田舎屋を借りて、家内と婢女じょちゅうと三人で居たが、家主やぬしはつい裏の農夫ひゃくしょうであった。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「えらいことになった、どうしたら好いだろう、それにあの女のれて来る婢女じょちゅうも、わら人形だ、牡丹のかざりの燈籠もやっぱりあったんだ、どうしたら好いだろう」
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
不図ふとある宿屋へ着くと、婢女じょちゅうが、二枚の座蒲団を出したり、お膳を二人前えたりなどするので「おれ一人だよ」と注意をすると、婢女じょちゅうは妙な顔をして、「お連様つれさまは」というのであった
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
婢女じょちゅうであろう稚児髷ちごまげのような髪をした少女に燈籠を持たせて、そのあとから壮い女が歩いて来たが、少女の持っている燈籠のかしらには真紅の色のあざやかな二つの牡丹の花のかざりがしてあった。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)