妬心としん)” の例文
触れるやいな、火花を散らす女の妬心としんのあたりに見て、かれの臆病な悪魔的な考えはおそれた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この娘! この娘! この娘なんだ! どうしてくれようとちらと横眼で見ると恋と妬心としんに先を急ぐ弥生は、同伴つれのお藤が何者であろうといっさい頓着とんじゃくないもののように
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
単に意外に感ずるばかりではなく、不安と妬心としんとがきらめいて見えるのです。
「ころしも霜月しもつき下旬の事なれば、(中略)四方よもは白たへの雪にうづみ、川風はげしくして、身体しんたい氷にとぢければ、手足もこごへ、すでにいきへんとせし時、」いつしか妬心としんを忘れしと云ふ
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宮内はそれをみると、慎んではいるつもりだが、妬心としんがふいと芽を出した。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
長崎屋の娘お喜多の浮気心をそそって、囲いの鍵を盗み出させようとしましたが、妹と触れ込んだお京は、その実半之丞の女房とさとられて、驕慢きょうまんなお喜多の妬心としんあおり、少し賢くない利吉を煽動せんどうして
妬心としんの間の諒解りょうかいと、愛の分割と集中とを自由に許される気持のうちに、夢のような、飯事ままごとのような、また何ともいえない甘苦しい陶酔のうちに、それでも無事に日は進行して行きましたが
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長崎屋の娘お喜多の浮氣心をそゝつて、圍ひの鍵を盜み出させようとしましたが、妹と觸れ込んだお京は、その實半之丞の女房と覺られて、嬌慢けうまんなお喜多の妬心としんあふり、少し賢こくない利吉を煽動せんどうして