如実にょじつ)” の例文
だから彼女は、又八から、武蔵が今刻々、死の危機へ近づいている様子を如実にょじつに聞いても、泣くほどな気持にはなって来なかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはいかに浅くとも、自分が精進の力の如実にょじつに現れているものに、相違なかった。市九郎は年を重ねて、また更に振い立った。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私は『般若心経』のこの講義を契機きっかけとして、真に般若の道を学びつつ、歩みつつ、如実にょじつに一つの道をシッカリと歩んでゆきたいと思っています。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「速記録なら速記者を頼む方が早い。しかしそこをうま塩梅あんばいして、ガラマサどんの精神を如実にょじつに現すのが君の腕さ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
仕事はある意味では器械的であるが一つ一つの記録を読んで行くうちに昔の江戸の生活が、小説や歴史の書物で見るよりも遥かに如実にょじつうかがわれて実に面白かった。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
夢がこれほど実感をともなって、みえたことはないというのは、オリムピックを通じての感想ではありましたが、それをこの時ほど、如実にょじつに感じたことはありません。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ただ悲劇に堪えられた姿だけを出来るかぎり如実にょじつに描きたいと念じたのである。「悲劇からの誕生」という言葉を借りるならば、太子の信仰とはまさにそれであった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
そして事実において階級意識よりも民族意識の方が圧倒的に強大なことは、過去の大戦争などで如実にょじつに示されている。民族存亡の危機に直面すれば、階級意識は容易に後退する。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
書斎程、その主人公の性格なり秘密なりを如実にょじつに語って呉れるものはないのですから。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
如実にょじつに、一切を心の眼でみるならば、一切の万物は、不生にして、不滅であり、不垢ふくにして、不浄であり、不増にして不滅だというのであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「小説家の修行は第一に観察さ。人間の性格や心理を如実にょじつに描写するんだから観察が大切だいじだ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私ははじめて多くの古仏を、その背後から触るるばかりにながめることが出来た。聖観音の背から胴体にかけてのなめらかな美しさは、指でさわるとそこがはじけそうに思われるほど如実にょじつであった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
如実にょじつにこれを実践し、実行するならば、自己の苦しみはいうまでもなく、他人の一切の苦しみをも、よく除きうるのでありまして、それを『心経』に
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「西洋の活動写真には西洋の風物を如実にょじつに見る便益がたしかにあります」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と少年時代を如実にょじつに突きつけられた向き/\もすくなくなかった。
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)