奉書ほうしょ)” の例文
ところでこの男がまた真剣白刃取しらはどりを奉書ほうしょの紙一枚で遣付やりつけようという男だったから、これは怪しからん、模本贋物を御渡しになるとは
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
七夜ひちや奉書ほうしょの紙に名前を書いて命名が済んだ。産婆からいい名前だとほめられたのが、お世辞にせよ彼には嬉しかった。
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
賢俊はそれの奉書ほうしょと、それに添えられた錦の旗の一巻ひとまきとを、両の手に持ち添えて、すこし前へ身をすすめる。尊氏は無言のまま拝受してあとへさがった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし越前の名を高めたのは、何よりも紙漉かみすきわざであります。武生近くの岡本おかもと村がその中心をなします。立派な厚みのある「奉書ほうしょ」はここのを第一といいます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そこの脇息きょうそくに腰打ちかけると、文庫の中の奉書ほうしょを取り出して、さらさらと達筆に書きしたためました。
浮世絵は概して奉書ほうしょまたは西之内にしのうちに印刷せられ、その色彩は皆めたる如くあわくして光沢なし、試みにこれを活気ある油画あぶらえの色と比較せば、一ツは赫々かくかくたる烈日の光を望むが如く
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私の眼の前で風呂敷を解くと中味は杉折りを奉書ほうしょに包んだもので黒の水引がかかっていて、その上に四角張った字で「妙音院高誉靖安居士……七回忌」と書いた一寸幅位の紙切かみきれが置いてあった。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
浮世絵は概して奉書ほうしょまたは西之内にしのうちに印刷せられ、その色彩は皆めたる如くあわくして光沢なし、試みにこれを活気ある油画あぶらえの色と比較せば、一ツは赫々かくかくたる烈日れつじつの光を望むが如く
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これ見給え、といわぬばかりに、手燭と共に、法相華文蒔絵ほうそうげもんまきえ手筥てばこがおいてある。筥には青銅の座金もあるが、鍵はかけてない。ぼてっと湿気をおびた一封の包み奉書ほうしょが中にあった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、使者は、徳川家でえらびだす闘士の名をしるした奉書ほうしょをそれへひろげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)