太刀先たちさき)” の例文
あの試合に殺気を立てたのはみんな浜という女のなすわざじゃ、文之丞が突いた捨身すてみ太刀先たちさきには、たしかに恋の遺恨いこんが見えていた
切り込む新子の太刀先たちさきを、あしらいかねて、圭子はタジタジとなったが、すぐ立ち直ると出鱈目な受太刀を、ふり廻し始めた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
伝吉は短い沈黙のあいだにいろいろの感情のむらがるのを感じた。嫌悪けんお憐憫れんびん侮蔑ぶべつ、恐怖、——そう云う感情の高低こうていいたずらに彼の太刀先たちさきにぶらせる役に立つばかりだった。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不敵にも右門へやいばを合わせようとしたものでしたから、予期しなかった敵対に不意を打たれて、おもわず二、三歩あとずさりながら、まずじっと五人の太刀先たちさきに目をつけました。
机竜之助の音無しの太刀先たちさきに向っては、いずれの剣客も手古摺てこずらぬはない、竜之助はこれによって負けたことは一度もないのであります。
この体当りもまた以て彼の得意のわざである——さすがの松浦もそれに堪えられず、よろよろとよろめくところを、第二の太刀先たちさき
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
手もなくその策略にひっかかった松浦の気は苛立いらだち、太刀先たちさきは乱れる。その虚に乗じた吉本は、十二分の腕をふるって、見事なお胴を一本。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「人がなんと申しましょうとも、兄はあなた様の太刀先たちさき刃向はむかう腕はないと、このように申し切っておりまする」
かれはいま眼が見えぬ、眼は見えないが、その太刀先たちさきは少しも衰えない、次第によっては、われわれが君のため、後見の役目をつとめてもよろしい、ずいぶん、油断すべき相手ではない
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)