大鼓おおかわ)” の例文
あなたの狛笛、曲や終りけん、ハタと止んで、こんどは能がかりの総囃子そうばやしが、前よりも、調子高く、大鼓おおかわを入れて鳴り出します。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
トトと大鼓おおかわの拍子を添え、川浪近くタタと鳴って、太鼓のひびきみぎわを打てば、多度山たどさんの霜の頂、月の御在所ヶたけの影、鎌ヶ嶽、かむりヶ嶽も冠着て、客座に並ぶ気勢けはいあり。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音楽はやがて急湍きゅうたんのように迫り、二つの音調は急流のように争いつつ、いつしか渾一に融合するうちに、いつともしれず大鼓おおかわの海鳴りの音が新しい根拠をもって轟いて来た。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
たった一けん、大門に近いとある引手茶屋の店さき、閉めた障子の硝子越しに一人のお酌の大鼓おおかわを火鉢の上にかざしているのをみた以外には、三味線の音、太鼓の音一つわたしは聞かなかった。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
その日の組能くみのうの何番目か、もう舞台はひらかれているらしい、遠く笛の音が聞える。大鼓おおかわ小鼓こつづみの大らかな響きが流れて来る。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヒュウー、ヒャラリ……と横笛や大鼓おおかわの音につれて、長閑のどかにもまた悠長な太鼓や鈴の交響楽——お神楽囃子かぐらばやしが聞こえます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——その時、どこかでゆるい笛の音がする……笛につれて太鼓……太鼓につれて小鼓、大鼓おおかわ。さらにもつるるかねと笛とが面白そうな諧調を作り出します。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神楽殿の大鼓おおかわが、その時、急に高く鳴り出した。武蔵が、われにかえると
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆるい大鼓おおかわ撥音ばちおとが、あたりの杉木立にたかくこだまする。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)