大黒天だいこくてん)” の例文
なーるほど、にこやかでほゝふくれてゐるところなんぞは大黒天だいこくてんさうがあります、それに深川ふかがは福住町ふくずみちやう本宅ほんたく悉皆みな米倉こめぐら取囲とりまいてあり、米俵こめだはら積揚つみあげるからですか。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
願ふはわが身をこのままに、天麩羅とやらんにしたまひて、彼の聴水を打つてべ。日頃大黒天だいこくてんに願ひたる、その甲斐ありて今ぞかく、わが身は恩ある黄金ぬしの、御用に立たん嬉れしさよ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
お福さんは鼠が大黒天だいこくてん家来けらいであり、たまには小判を口にくわえてかえってくることもあるかのごとく、思っていた人々の附与した名のようだが、一方の嫁様または嫁がきみは伝来が弘くまた久しい。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夕暮よりも薄暗い入梅の午後牛天神うしてんじんの森蔭に紫陽花あじさい咲出さきいづる頃、または旅烏たびがらすき騒ぐ秋の夕方沢蔵稲荷たくぞういなり大榎おおえのきの止む間もなく落葉おちばする頃、私は散歩の杖を伝通院の門外なる大黒天だいこくてんきざはしに休めさせる。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)