夜鳥よどり)” の例文
鹿苑院ろくおんいん金閣寺、いつかその辺りも通ってしまった。だんだん山路が険しくなる。いよいよ木立が繁り増さり、気味の悪い夜鳥よどりの啼声がする。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そちらの月の夜は、夜鳥よどりもさぞ鳴きすぎることでございましょう。月明つきあかりに、夜空に流れる雲のたたずまいもさぞ眺められることで御座いましょう。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
耳をすますと、しんと静まり反った、夜の中に、かすかに、幽かに、あるかなきかに聞えて来る、裏山の夜鳥よどりの声。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふと気づけば、あたまにくなっていた自分の一剣が地におちていた。拾い上げて、腰に横たえ、空を仰ぐと、夜鳥よどりの一群が、斜めに落ちていくのが見える。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時々夜鳥よどりがその中から、翼に薄い燐光りんこうを帯びて、風もないこずえへ昇って行った。……
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
安治川尻あじがわじりに浪が立つのか、寝しずまった町の上を、しきりに夜鳥よどりが越えて行く。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから私はよく早寝をした。が、床にはいっても容易に眠くはならなかった。雨戸の外では夜鳥よどりの声が、遠近えんきんを定めず私を驚かした。その声はこの住居すまいの上にある天主閣てんしゅかくを心に描かせた。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まるで夜鳥よどりの鳴くような、しわがれた声が起りました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)