壁間へきかん)” の例文
時国の話によると主人は絵かきだということで、下にも二階にも、壁間へきかんに怪しげな油絵の額が沢山かかっていた。
夏の夜の冒険 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
うるさいくらい稽古を積んだものだ。こんなことを思い起しながら、安部君の顔から壁間へきかんへ目を移すと、説教題が
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
すでに然るからはこれを果亭と認めて壁間へきかんにぶら下げたのにしろ、毛頭まうとう自分の不名誉になる事ぢやない。いはんや自分は唯、無名の天才に敬意を表する心算つもりで——
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
先生は仰いで壁間へきかんの額を見た。京の舞子が友禅ゆうぜん振袖ふりそでつづみを調べている。今打って、鼓から、白い指がはじき返されたばかりの姿が、小指の先までよくあらわれている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の肖像を見ると何さま精悍せいかんな気をうける。T氏は、武蔵が二刀を持って立っているあの肖像画を常に壁間へきかんに懸けているが、何か剣道の論義が出る時など、客に向って
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とたんに大統領は、蒼白そうはくになって、椅子の上にのびてしまった。一体どうしたというのであろう。壁間へきかんには、塗りかえられた旧蘭印きゅうらんいん、旧マレイの地図が、夕陽ゆうひを浴びて赤く輝いていた。
それを大きな紙に写し取って壁間へきかんに掲げました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
壁間へきかんに、ぽッと四角な窓があいた。窓ではない、テレビジョンの映写幕である。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)