塩原しおばら)” の例文
旧字:鹽原
それから三、四年の後に、「金色夜叉こんじきやしゃ」の塩原しおばら温泉のくだりが読売新聞紙上に掲げられた。それを読みながら、私はかんがえた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一月ぐらいたって塩原しおばらへ行ったら、そこの宿屋の縁側へ出て来た猫が死んだ三毛にそっくりであるのに驚いた。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あとに続く木川子、それにかく申す吾輩、殿軍しんがりとしては五尺六寸ヌーボー式を発揮した未醒みせい画伯、いずれも着茣蓙きござを羽織って、意気揚々塩原しおばらへこそ乗りこんだり。
当時入谷には「松源まつげん」、根岸に「塩原しおばら」、根津ねづに「紫明館しめいかん」、向島に「植半うえはん」、秋葉に「有馬温泉」などいう温泉宿があって、芸妓げいぎをつれて泊りに行くものもすくなくなかった。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
熱海あたみ修善寺しゅぜんじ箱根はこねなどは古い温泉場でございますが、近年は流行りゅうこういたして、また塩原しおばらの温泉が出来、あるい湯河原ゆがわらでございますの、又は上州に名高い草津くさつの温泉などがございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先年塩原しおばらの山中を歩いていた時に、偶然にこの涼しさの成立条件を発見した。とその時に思ったことがある。
先刻西那須野にしなすのを過ぎて昨年の塩原しおばら行きを想い出すままにこのはがきをしたためそうろう
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)