執着しふちやく)” の例文
からははひにあともとゞめずけぶりはそら棚引たなびゆるを、うれしやわが執着しふちやくのこらざりけるよと打眺うちながむれば、つきやもりくるのきばにかぜのおときよし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
舊藩きうはん因縁いんねん執着しふちやくする元氣げんき豪傑連がうけつれんや、ちひさな愛國者達あいこくしやたちが、墮落だらくしたコスモポリタンを批難ひなんするのであつた。
藝術の野心と云はうか現世の執着しふちやくと云はうか、或は人間の單純なる本能と云はうか。兎に角、私は死ぬ前に、實在から消え滅びて仕舞ふ其の前に、自分の影を留めた何物かを殘したい。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
情なくなツても執着しふちやくが強いから、何うにかしてでツち上げやうと思ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
執着しふちやくの日の喚叫さけびごゑ、黒ずむ悪の火の羽ぶき
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
執着しふちやくよ、臨終いまはの刹那
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)