うし)” の例文
もうその時が来たかのように、志保が色をうしなって考えこむのを見たお萱は、却ってうろたえたように急いでうち消した。
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
八五郎とお葉は、それつきり氣をうしなつてしまつたのです。それを、ズルズルと井戸端まで引摺つて行つたのは、何處から現はれたか、錢形平次ときね太郎の姿でした。
縁先にいた若侍たちは色をうしなった。しかし鉄之助のはかまひざへたちまち血がにじみひろがってゆくのを見ると
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主人の彦七はまだ四十二三、頑丈そうな身体と、弱そうな神経を持った典型的な旦那衆で、検屍が無事に済んで、改めて配偶つれあいうしなった悲嘆にさいなまれている様子です。
「伯父上、助けてやって下さい」と直二郎は間髪をれず斬り込んだ、「気の毒な身の上の者なんです、生れるとすぐ父に死なれ、育ちざかりに母親もうしないまして、 ...
明暗嫁問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
主人の彦七はまだ四十二三、頑丈さうな身體と、弱さうな神經を持つた典型的な旦那衆で、檢屍が無事に濟んで、改めて配偶つれあひうしなつた悲歎にさいなまれて居る樣子です。
ふとした事から、お鳥の異国的な美しさを見た、三千石取の旗本、安城郷太郎と言う中年の武家が妻をうしなったばかりの淋しさもあったでしょう。恐ろしい熱心で、——お鳥を懇望したのです。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
妻の顔は血のけをうしなって硬ばり、固く歯をくいしばっていた。悶絶もんぜつしたのであった。……高雄は茶碗に水をんで来て、妻を抱き起して、くいしばった歯の間から口の中へ注ぎ入れてやった。
つばくろ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お鈴はひどく頭を打って気をうしなった上土間の渡り板に足を挟んで右足を折ったらしく、なおったところで、綱渡りの曲芸などは、生涯出来ないかも知れないと、骨接ぎも外科も言って居るのでした。
お鈴はひどく頭を打つて氣をうしなつた上土間の渡り板に足を挾んで右足を折つたらしく、なほつたところで、綱渡りの曲藝などは、生涯出來ないかも知れないと、骨接ぎも外科も言つて居るのでした。
と氣をうしなつて了ひました。