喉輪のどわ)” の例文
敵の腕は、彼の喉輪のどわを抱き込んだ。そのまま、二つの体が弓形ゆみなりになって、だだだだと、うしろへよろめいた。右衛門七は、声も出せない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はっしと床へ叩きつけた……か⁉ 否々いやいやその時おくればせに這いあがったメリケン壮太が、後から毛唐の首へ腕をまわして、喉輪のどわ責めに締めあげた。
危し‼ 潜水艦の秘密 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
忠一は左に敵の腕を押えて、右の手で敵の喉輪のどわを責めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かつ、朱をそそいで太くふくらませた武松ののど首から、ぱんと首カセの蝶番ちょうつがいがね、喉輪のどわの邪魔物は、二ツになって飛んでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喉輪のどわか脇壺か、または草摺くさずりはずれを刺し通して相手を倒すと、そのまま見向きもせずに次の強敵に向って斬り込んでゆく、いま自分の討った相手がどんな高名な部将であろうとも
石ころ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
弟の叫びに、吃驚びっくりして振り向くと、八十三郎は、八、九名の捕手に、脚や手を持たれ、喉輪のどわに、十手を噛まされていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で——思わず、金吾がアッと言いましたが、もう万太郎はたいをとばして、敵の喉輪のどわへ拳法の一手をはげしく突いている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐ組みしかれて、その後頭部を大地にこづかれた高氏は、右馬介の喉輪のどわを、からくも、片手で締め返しながら
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われを忘れて、船をおしている伊那丸のうしろから、松の木のようなうでが、グッと、喉輪のどわをしめあげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の喉輪のどわにかけた腕を死すとも離すまいという懸命をこめて、さらに相手の体をあとへねじる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとりが喉輪のどわへ腕をかけて締めつけると、ひとりは逸早く手ぬぐいを取って猿ぐつわをかける。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と新九郎は、恩ある生不動の危機と見て、猛烈に一角の喉輪のどわを攻めつけた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)