咒文じゆもん)” の例文
彼は何かぶつ/\のゝしつてゐたらしいが、私にはわからなかつた。がとにかく咒文じゆもんのやうなものをとなへてゐたので、直ぐには返辭をしなかつた。
中介は、女が相手でも子供が相手でも真剣に喧嘩をする性質たちであつたが、さればとよ、とか、さもあらばありけれ、などゝ不思議な咒文じゆもんを発するときは、戦意昂揚の証拠なのである。
朴水の婚礼 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
まち人恋ふるねづみなき格子の咒文じゆもん、別れの背中せなに手加減の秘密おくまで、唯おもしろく聞なされて、くるわことばを町にいふまで去りとははづかしからず思へるもあはれなり、年はやうやう数への十四
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
北高和尚はすこしもおそるゝいろなく口に咒文じゆもんとなへ大声たいせい一喝いつかつし、鉄如意てつによいあげて飛つく大猫のかしらをうち玉ひしに、かしらややぶれけん血ほどはしりてころもをけがし、妖怪えうくわい立地たちどころ逃去にげさりければ
と、よく意味のわかる咒文じゆもんをとなへました。
(新字旧仮名) / 新美南吉(著)
北高和尚はすこしもおそるゝいろなく口に咒文じゆもんとなへ大声たいせい一喝いつかつし、鉄如意てつによいあげて飛つく大猫のかしらをうち玉ひしに、かしらややぶれけん血ほどはしりてころもをけがし、妖怪えうくわい立地たちどころ逃去にげさりければ
このときほど神護の咒文じゆもんが口をついて走るにふさはしい時はない。
彼は妹を指しながらまるで咒文じゆもんを呟くやうに早口に言ひだした。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)