周章あわたゞ)” の例文
亭主であらう、五十ばかりの男、周章あわたゞしさうに草履を突掛け乍ら、提灯ちやうちん携げて出て行かうとするのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
鏡子は周章あわたゞしい世界へ帰つて来たと夢から醒めた時のやうな息をして子供達を見て居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
致さぬもの今犬めが餘り吼付ほえつきし故つひ拔討ぬきうち斬殺きりころしけるが其血汐の付たる者ならんと云ひて周章あわたゞしく其まゝに別れ候ひし由尤も病氣にて弟の見送みおくりもいたさぬ長庵が然樣さやう始末しまつ甚だ以てあやしく存じ候まゝ何卒なにとぞ忠兵衞へ御尋ねの上長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
多くの乗客はいづれも窓に倚凭よりかゝつて眺める。細君も、弁護士も、丑松に別離わかれを告げて周章あわたゞしく乗込んだ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かきつかはしたる事ゆゑ早速さつそくには思ひ出さず暫時しばし考へしが漸々やう/\の事にて江戸より弟が來りしかと心付にはかに周章あわたゞしく出來り見るに年こそよりたり弟の長兵衞に相違さうゐなき故清兵衞は大いによろこび是は/\長兵衞能こそ來て呉しなり豈夫よもや今年の中に來てはくれまじと思ひ居たりしに能も/\遠路ゑんろの所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)