呉淞ウースン)” の例文
朝のうち長崎についた船はその日の夕方近くにともづなを解き、次の日の午後ひるすぎには呉淞ウースンの河口に入り、暫く蘆荻ろてきの間に潮待ちをした後、おもむろに上海の埠頭はとばに着いた。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この間なんぞは鉄砲を積んで呉淞ウースンに這入りかけたら、その間際で船員のうちに、スパイが二人まじっている事を発見したから、文句なしにブチ込んでくれたよ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夜の八時過ぎに呉淞ウースンを出帆した。ここから乗り込んだ青島チンタオ守備隊の軍楽隊がともの甲板で奏楽をやる。上のボートデッキでボーイと女船員が舞踊をやっていた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうです先刻も申しました通り、私は明日にも上海を立って、呉淞ウースンから沙市シャシの方へ旅行するのですが、その旅行する目的も、その青幇と紅幇とに、断然関係があるのです。
西航五百里、シャンハイ河口なる呉淞ウースンに達せしは二十二日夜半なり。翌朝八時小汽船に駕し、黄浦をさかのぼりてシャンハイに上陸し、城内城外を一巡し、湖心亭茶園・愚園等を遊覧す。
西航日録 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そして呉淞ウースン砲台の沖で、米国駆逐艦三隻を撃沈したのだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
呉淞ウースン鎮だ。ひどくやられてるな」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
低い、うねりを打ったような丘陵続きの海岸に近く五そうの水雷駆逐艇が、重なり合って碇泊している。その横に三号活字でベタベタと「呉淞ウースンに着いた分捕ぶんどり独逸ドイツ潜水艇」
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
呉淞ウースン碇泊ていはくしている。両岸は目の届く限り平坦へいたんで、どこにも山らしいものは見えない。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
黄浦河を下り呉淞ウースンへ出、それから西して揚子江をさかのぼり、鎮江チンキャン南京ナンキン蕪湖ウーフー九江キューキャン漢口ハンカオ岳州ヨウチョウ沙市シャシあたりへまで、旅行をしなければならなかったので、大いに勇気づいていたのでした。
定海じょうかい湾、舟山しゅうさん島、乍浦チャプー寧波ニンポー等を占領し、更に司令官ゴフと計り、海陸共同して進撃し、呉淞ウースンを取り、上海を奪い、その上海を根拠とし、揚子江を堂々溯り、鎮江チンチャンを略せんとしている人間なのさ。
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)