可味うま)” の例文
ひよツとして、本場の上等鰹節のない時は、白醤油を皿に入れ、それを箸の尖端さきで䑛めつゝ、可味うまさうに飯の實を味つてゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「皆んな其處で御膳ごぜんべてえ——。」と、京子は自分の枕から見えるところに、一同の膳を持ち出さして、可味うまさうに喰べるのを喜ばし氣に見てゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一匹の蟻をば砂糖壺の中へ投げ込んだやうに、文吾は可味うまさうな柿の實に包まれてしまつて、まご/\した。どれからむしり取らうか、と手のやり場に困つた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
可味うまさうだなア。」と、文吾は思つて、唾液を呑み込み/\した。「喰べたいなア。」と思つて立止つた。それが爲めに、寺へ行くのが遲れた上をなほ遲れた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「えゝ。これはしやれやおまへんで。……下界は厭やだす。けどなア、飯だけは下界の方が可味うまいので、時々喰ひに來たりまんね。飯さへなかつたら下界に用はない。」
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
玄竹げんちくさけからいとかんずるやうになつては、人間にんげん駄目だめだなう。いくんでも可味うまくはないぞ。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
煙管を下に置いて、巧みな手つきで短くなつた蝋燭のシンを切つてから、お梶はスパ/\と快く通るやうになつた煙管で、可味うまさうに煙草を吸つて、濃い煙を吐き出した。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
煙管を下に置いて、巧みな手つきで短くなつた蝋燭のシンを切つてから、お梶はスパ/\と快く通るやうになつた煙管で、可味うまさうに煙草を吸つて、濃い煙を吐き出した。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
徳利の酒を波々と注ぎ、痩せた頸の咽喉佛をビク/\動かして、可味うまさうに舌鼓を打つた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「飯は、いて喰はな可味うまうない。」と、太政官は口癖のやうに言つてゐた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「これ知らんかなア、お前の飮酒家さけのみもまだ素人や。」と、父は丹念に壺の目貼を取つて、灰吹を掃除した時に出るやうな、ぬら/\した、汚らしいものを箸に挾み出して、可味うまさうに舌打した。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「おゝ可味うまい、早松は秋ほど薫りがないちうのは嘘や。」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)