古足袋ふるたび)” の例文
へやは屋根裏と覚しく、天井低くして壁は黒ずみたれど、彼方かなた此方こなた脱捨ぬぎすてたる汚れし寝衣ねまき股引もゝひき古足袋ふるたびなぞに、思ひしよりは居心ゐごゝろ好き住家すみかと見え候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
土手の柳の間に古着ふるぎ古足袋ふるたび古股引ふるももひきたぐいを並べる露店から、客待ち顔な易者の店までが砂だらけだ。目もあけていられないようなやつが、また向こうからやって来る。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
開ける時キイキイいやな音のする安箪笥やすだんす、そんなものは、うんとたまっていた古足袋ふるたびや、あかのついた着物をじ込んで、まだ土の匂いのする六畳の押入れへ、上と下と別々にして押し込んだ。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
古足袋ふるたび四十しじふもむかし古机ふるづくゑ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)