古強者ふるつわもの)” の例文
「あの山伏は、おそらく九度山くどやまの一類だろう。兜巾ときん白衣びゃくえ鎧甲よろいかぶとに着かえれば、何のなにがしと、相当な名のある古強者ふるつわものにちがいない」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やあ、古強者ふるつわものが控えているぞ、これは相当のものだ、一方の旗頭が着用したものだ、時代は北条中期かな——鎌倉前期までは行くまい」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
初めて上海へ行った新参者の私が、そういう古強者ふるつわものの中国通たちを案内して、蛙料理を食わしてやると、いずれの面々もその美味に驚嘆した。
蝦蟇を食べた話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
分裂病は二十歳前後に発病し、周期的にくりかえして根治することが先ずないので、入院患者も、三度目の入院とか六度目とかという古強者ふるつわものが多い。
精神病覚え書 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
少佐のそばに目を丸くして立っていた萱原かやはらという古強者ふるつわものの小隊長が、少佐に向っていったことである。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕あ、人から馬鹿にされるのは嫌いなんだ。そんなっぽけなくせして、この古強者ふるつわものをちょろまかそうったって、そりゃ無理だよ。こんどやったら、ポマードのびん
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ぼろ男も、それを語るあいだだけは、姿勢もしゃんとして、百戦錬磨れんま古強者ふるつわものらしく見えた。だが、かれはまたぐったりとなってしまった。そして、しきりに大粒の涙を流した。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いずれも上海で売込んだ古強者ふるつわものから成っていた。
Moods cashey (新字新仮名) / 服部之総(著)
が幸いにも、その中には、斎藤家三代にわたって、この乱国の中に、主家の勢威を維持して来た老練の士や古強者ふるつわものも多くいた。今をささえている力であった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古強者ふるつわものであろうと、そう無暗に捕って食おうとはいうまい、土方が来ようと、沖田が来ようと、こっちの知ったことじゃないという腹があるから、左様にわるびれた色はなく
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
千軍万馬を往来した古強者ふるつわものというのは当らないようである。
安吾史譚:01 天草四郎 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)