口幅くちはば)” の例文
「そう? 誰が受合ってくれたの。何だか解ったもんじゃないわね。あんまり口幅くちはばったい事をおっしゃると、見届けに行きますよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
口幅くちはばったい言い分だな、ドレだけ修行して、ドレだけ出来るのか、勝に限って、まだ人を一人斬ったという話も聞かない」
仮名床かなどこ伝吉でんきちやつァ、ふだん浜村屋はまむらやきだのはちあたまだのと、口幅くちはばッてえことをいってやがるくせに、なんてざまなんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
歌い手に不似合な、つかっても費い切れない程の富もあるし、口幅くちはばったい様だが、世界的な名声とやらもあります。この上私は何んの人気を望んで居るでしょう
焔の中に歌う (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
口幅くちはばったいことを、申す様でございますが、金で動かせない方と云ったら、数える丈しかありませんからね。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
口幅くちはばたい申し方ですが、てまえから忌憚きたんなくいわせていただくなら、その煩悩こそ、殿のよいところと、人間の至情、何をか、臣下へ御遠慮がありましょう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身体からだこそこんなに貧弱な野郎だが、兇状持揃きょうじょうもちぞろいの機関室でも、相当押え付けるだけのうでぷしと度胸だけは口幅くちはばったいが持っているつもりだ。現に船員連中ふねじゅうから地獄の親方と呼ばれている位だ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
旦那、口幅くちはばっとうはござりますが、目で見ますより聞く方がたしかでござります。それに、それお通りだなどと、途中で皆がひそひそ遣ります処へ出会いますと、ぷんとな、何とも申されません匂が。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
口幅くちはばったい申し分ですが、この道の後学のためにひとつ、拝見をさしていただきたいとこう思いますんで……
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんな小坊主までなかなか口幅くちはばってえ事を云いますぜ——おっと、もう少しどたまを寝かして——寝かすんだてえのに、——言う事をかなけりゃ、切るよ、いいか、血が出るぜ
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
口幅くちはばたいヘボ医者め。何としても申さぬな。きっといわんな」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分からこういうと口幅くちはばったいようだが、日本広しといえども馬鹿囃子にかけちゃあ、当時下谷の長者町の道庵の右に出でる者があったらお目にかかる、この道庵の眼から見れば
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)