こまぬ)” の例文
蟲のわたりて月高く、いづれも哀れは秋の夕、しとてものがれんすべなきおのが影を踏みながら、うでこまぬきて小松殿のかどを立ち出でし瀧口時頼。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
またの名は庭筠ていいんあざな飛卿ひけいである。挙場にあって八たび手をこまぬけば八韻の詩が成るので、温八叉おんはっしゃと云う諢名もある。鍾馗と云うのは、容貌ようぼうが醜怪だから言うのだ。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
御溝をはさんで今を盛りたる櫻の色の見てしげなるに目もかけず、物思はしげに小手こまぬきて、少しくうなだれたる頭の重げに見ゆるは、太息といき吐く爲にやあらん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
貞固はこまぬいていた手をほどいていった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)