千々岩ちぢわ)” の例文
更にそのすえが裾野となって、ゆるやかな傾斜で海岸に延びており、そこに千々岩ちぢわ灘とは反対の側の有明ありあけ海が紺碧こんぺきの色をたたえて展開する。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
「なるとも。愉快、愉快、実に愉快。——愉快といや、なあお隅、今日きょうちょっと千々岩ちぢわに会ったがの、例の一条も大分はかが行きそうだて」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
センバという名称は西は大分県海部あまべ郡、肥前ひぜん千々岩ちぢわ、また熊本県八代やつしろ郡などにも見いだされるが、主としては東北の端々はしばしにおいて行われている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
挙兵の檄文げきぶんは忽ちに加津佐、串山、小浜、千々岩ちぢわを始め、北は有江、堂崎、布津、深江、中木場の諸村に飛んだ。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
地図にも載っていませんから、ここが何というところかわかりませんが、いよいよ海岸へ出端ではずれて来たのです。南高来みなみたかき郡の西端、千々岩ちぢわ湾の海岸へ、抜けることができたのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
木場道は雲仙から千々岩ちぢわくだる道で、これも自動車を通ずるが、カーブがはなはだしいのと道が狭くて急であるから、多く小浜道おばまみちが選ばれるのだ。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
燃ゆるがごとき憤嫉ふんしつを胸にたたみつつわがぐうに帰りしそのより僅々きんきん五日を経て、千々岩ちぢわは突然参謀本部よりして第一師団の某連隊付きに移されつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
見下みおろす眼の下には、見事な長い半円を描く千々岩ちぢわの松原と、この半円に添うて、いつも二段くらいに長いカーブを作って縁取へりとりしている白波が見える。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
これは旦那がおもしろく思いなさらぬももっともじゃとわたしは思うくらい。それに困った人はあの千々岩ちぢわさん——たしかもう清国あっちったように聞いたですが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)