前触まえぶ)” の例文
旧字:前觸
何の前触まえぶれもしてなかったことだし、停車場には勿論もちろん誰も出迎えに来てはいなかったので、私達はすぐ駅前のくるまに乗ってホテルに向った。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おい、みんな。これは遭難の前触まえぶれに決った。お前たちは、すぐ部署ぶしょにつけ。おい事務長銅羅どらをならして、総員配置につけと伝達しろ」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかしまあ何でございますね、前触まえぶみんな勝つことばかりでそれが事実まったくなんですから結構で、わたくしなどもその話を聞きました当座は、もうもう貴方。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
養父の宗十郎はこの頃擡頭たいとうした古典復活の気運にそそられて、再び荻江節の師匠に戻りたがり、四十年振りだという述懐じゅっかい前触まえぶれにして三味線しゃみせんのばちを取り上げた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
新しいものが生れるということは「新しいものを作るぞ」と前触まえぶれしてから生れるものではあるまい。沈潜して研究している結果、自然々々に生れ出て来るものであろう。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)