切燈台きりとうだい)” の例文
と、切燈台きりとうだい燈芯とうしんが、ボッと、赤い焔を横に寝かしましたので、オヤと、老人が筆をめて横を見ると、そこが、三、四寸ほどいている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わかい男はその日から昼間は塗籠ぬりかごの中へ入れられ、夜になると長者のへやへ引き出されて、切燈台きりとうだいの用をさせられました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「赤餅を許してやるかわりに、十日間切燈台きりとうだいにする」と云って、長者は手にしていた鉄片を投げだしました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
閣上かくじょう源氏げんじには、一すい燈火ともしび切燈台きりとうだいあぶらいつくして、ジジジと泣くように明滅めいめつしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時むすめわかい男は、几帳きちょうの陰でひそひそと話しておりました。切燈台きりとうだいは淋しそうにともっておりました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
淡墨の絵襖えぶすまに、高脚たかあし切燈台きりとうだいの灯が静かにまたたいて、黒い艶をもった柱、古色をおびた天井、つぶし貝が星のように光る砂壁など、いかさま千余年来の旧家と思われる落着きです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小屏風こびょうぶのかげに、銀のらしをつけた切燈台きりとうだいが、まめほどな灯明ほあかりを立てていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銀泥ぎんでい利休屏風りきゅうびょうぶに、切燈台きりとうだいがチカチカと照り返していた。青螺せいらつぶしの砂床すなどこには、雨華上人うげしょうにんの白椿の軸、部屋の中ほどに厚いしとねを重ね、脇息きょうそくを前において、頬杖をついている人物があった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)