切屑きりくず)” の例文
「そうなんです。色んな恰好をした少年の爪の切屑きりくずなんです。十二三人分もありましたろうか……おわかりになりませんか」
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
僕はあれを見た瞬間に、ソバカスが顔の一方にけあるのを不思議に思ったんだ。で、よく調べて見ると、なんの事はない鉄の切屑きりくずの粉が一面にめり込んでいるのさ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
くや額に玉の汗、去りもあえざる不退転、耳に世界の音もなく、腹にうえをも補わず自然おのず不惜身命ふじゃくしんみょう大勇猛だいゆうみょうには無礙むげ無所畏むしょい切屑きりくず払う熱き息、吹き掛け吹込ふっこむ一念の誠を注ぐ眼の光り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多分焼く時に出来損ねたのであろう。この蝦蟇出の急須に絹糸の切屑きりくずのように細かくよじれた、暗緑色の宇治茶を入れて、それに冷ました湯をいで、しばらく待っていて、茶碗ちゃわんらす。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)