出端では)” の例文
谷へはさまって、出端ではを失った風が、この底をすくうようにして通り抜ける。黒いものは網の目をれた雑魚ざこのごとく四方にぱっと散って行く。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その次の中入後のワキ・ワキヅレの待謡まちうたひから、後ジテの出端ではの登場・神舞かみまひきりのロンギまでは、全曲の急の部分であるから、これはテンポを早めて颯爽たる所を見せねばならぬ。
演出 (新字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
やがて鼻と口をかれた感動が、出端ではを失って、眼の中にたまって来た。まつげが重くなる。まぶたが熱くなる。おおいに困った。安さんも妙な顔をしている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出端ではのない行きどまりに立つくらいなら、もう一遍引き返して、新らしいみちを探す方がましだとも考えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
落雷を、土中どちゅううずめて、自由の響きを束縛そくばくしたように、しぶって、いらって、いんこもって、おさえられて、岩にあたって、包まれて、激して、ね返されて、出端ではを失って、ごうとえている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)