出板しゅっぱん)” の例文
印刷いんさつ出板しゅっぱんの手続きより一切いっさい費用ひようの事まで引受ひきうけられ、日ならずして予がのぞみのごとくなる冊子さっし数百部を調製ちょうせいせしめて予におくられたり。
然れども文化ぶんか初年長崎赴任の後駿河台するがだいに移り住みし頃より再び文壇に接近し『南畝帖千紫万紅なんぼちょうせんしばんこう』『南畝莠言ゆうげん』等の出板しゅっぱんを見るに至れり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
目安箱めやすばこの設置、出板しゅっぱん条例の頒布はんぷ、戸籍法の改正、郵便制の開始なぞは皆その時代に行なわれた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いつ頃からの風俗か知らぬが蒲団ふとんから何から何までが赤いずくめで、枕許まくらもとには赤い木兎、赤い達磨を初め赤い翫具おもちゃを列べ、疱瘡ッ子の読物よみものとして紅摺べにずりの絵本までが出板しゅっぱんされた。
英国の弁護士で『デカメロン』の諸話の起因と類譚を著わしたエー・コリングウッド・リー氏が出板しゅっぱん前に書を飛ばして、予が知っただけの事をらしくれ編入したいからと言うて来たので
なほフェノロサがその編纂目録において浮世絵板物の一枚ごとにその出板しゅっぱん年代を記載したるは頗る驚愕きょうがくすべき事とす。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あの出板しゅっぱんは大変な評判で、津和野藩つわのはんあたりからも手紙が来るなんて、伊那の衆はえらい意気込みさ。そう言えば、暮田正香くれたまさかが京都から逃げて来る時に、君の家にもお世話になったそうですね。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは昔から江戸名所に関する案内記狂歌集絵本のたぐいおびただしく出板しゅっぱんされたのを見ても容易に推量する事が出来る。太平の世の武士町人は物見遊山ものみゆさんを好んだ。