内幕うちまく)” の例文
「僕は経済方面の係りだが、単にそれ丈でも中々なか/\面白い事実ががつてゐる。ちと、君のうちの会社の内幕うちまくでもいて御覧に入れやうか」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
本店の内幕うちまくを知れば支店の事はすぐわかる道理。大正現代の文学はそのみなもと一から十までことごとく西洋近世の文学にあり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
……入りくんだ内幕うちまくを聞いたって、ひとに洩らす気づかいはない。また、それほどの酔狂でもありません。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
俊助はこんな醜い内幕うちまくに興味を持つべく、余りに所謂いわゆるニル・アドミラリな人間だった。ましてその時はそれらの芸術家の外聞がいぶんも顧慮してやりたい気もちがあった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
孔子こうしも子は父のために隠し、父は子のために隠すと教えたごとく、かくすことが国家に危害きがいあたうるならいざ知らず、会社の内幕うちまくを語りいたずらに他に告ぐるがごときは裏切り同然で
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
芸者の内幕うちまく穿うがつて書けば通人といはるるに引かへて、白首の事よりほかには知らぬ人といはれては、文士もいささか気まりがわるくなるものと見えたり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それが二三年まえから不義理な借金で、ほとんど首もまわらないと云う事——珍竹林主人はまだこのほかにも、いろいろ内幕うちまくの不品行をっぱぬいて聞かせましたが
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三沢はすべてこういう内幕うちまく出所でどころをみんな彼の看護婦に帰して、ことごとく彼女から聞いたように説明した。けれども自分は少しそこに疑わしい点を認めないでもなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕はことによると、もう実業はめるかも知れない。実際内幕うちまくを知れば知る程いやになる。其上此方こつちて、少し運動をして見て、つくづく勇気がなくなつた」と心底しんそこかららしい告白をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)