其筋そのすじ)” の例文
この重大事件を予め知っていながら其筋そのすじに届けでなかった不都合を散々さんざんに責められたが、彼が知名の実業家の息子であったこと
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
では諸君は僕が其筋そのすじの嫌疑のために並々ならぬ困難を感じていることも御存じあるまい。しかし警察は知っていたのである。
風博士 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
中にも犯罪事件は彼の大好物であって、有名な犯罪事件で、彼の首を突込まぬはなく、時々は其筋そのすじの専門家に有益な助言を与える様なこともあった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
嗟乎ああ。では諸君は僕が其筋そのすじの嫌疑のために並々ならぬ困難を感じてゐることも御存知ないのであらうか? 於戯ああ。では諸君は僕が偉大なる風博士の愛弟子であつたことも御存じあるまい。
風博士 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「……前額ぜんがくの中央に弾痕のある点ピストルの落ちていた位置などもって見るも自殺とは考えられぬ、其筋そのすじでは他殺の見込みを以て、已に犯人捜索に着手した」
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
事毎ことごとに水に縁のある所を見ると、兇賊は舟を根城ねじろとして巧みに其筋そのすじの眼をくらましているのではないかと、その方面に厳重なる捜査が開始される模様である。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この怪汽艇がどうして其筋そのすじの目をのがれたかと云えば、外部をすっかり塗り変えて、真面目な貨物船と見せかけていた上、多くは港外の海上をあちこちして
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其筋そのすじをさしおいて、要らぬおせっかいをするものでないと、ひどく叱りつけられたばかりか、其後度々呼出しを受けて、何人もの人に同じ答えを繰り返さねばならなかった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その彼等の死因についても、色々の噂がないではありませんでしたが、単に噂にとどまって、いずれもつかみ所のない、したがってそれが其筋そのすじの注意をくという程のものではなかったのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何たる図太ずぶとさであろう、其筋そのすじの捜査を手ぬるしと考えたか、実に奇々怪々の手段をろうして、秘し隠しに隠すべき我が名を、「これを見よ、これでも君達は俺をつかまえることが出来ぬのか」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やがては、このことが其筋そのすじの耳に入るでしょう。そして、腕利きの探偵によって、それからそれへと調べの手を伸ばされたなら、いつかは真相が暴露するのは、極り切ったことなのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
同研究室は、普通の民間探偵とは違い、其筋そのすじでも手古摺てこずるほどの難事件でなければ、決して手を染めようとはしなかった。所謂いわゆる「迷宮入り」の事件こそ、同研究室の最も歓迎する研究題目であった。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
車掌の急報で其筋そのすじの連中がやって来る。野次馬が集る。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)