六十路むそぢ)” の例文
未だ浮世うきよれぬ御身なれば、思ひ煩らひ給ふもことわりなれども、六十路むそぢに近き此の老婆、いかでためしき事を申すべき、聞分け給ひしかや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
四十五年の御代みよ長く、事しげき代の御安息みやす無く、六十路むそぢあまり一年ひととせ御顔みかおに寄する年の波、御魂みたましたふ西の京、吾事終へつとうそむきて、君きましぬ東京に。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その人はよはひ六十路むそぢ余にかたふきて、顔はしわみたれど膚清はだへきよく、切髪きりがみかたちなどなかなかよしありげにて、風俗も見苦からず、ただ異様なるは茶微塵ちやみじん御召縮緬おめしちりめん被風ひふをも着ながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
六十路むそぢあまり共に浮世を夢と見き君こそ先づは覚めて往にけれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
六十路むそぢ超え声色の慾枯れたればし物のこと朝夕に
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
まして、六十路むそぢに余れる夫有つまもてる身とたれかは想ふべき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)